「社保庁自爆テロ説」に対する長妻議員の反撃

先の参議院選挙における重要な争点となってしまった5000万件の年金記録不備問題ですが、その情報の出所について自民党や彼らの応援団の評論家たちによって、しきりに「これは社保庁が自らの解体を阻止するために流した自爆テロ」だとの陰謀論が叫ばれていました。
私が知っている限りでは、この説を主張しているのはこれらの人物です。

自民党
安倍晋三総理大臣(2007年7月20日読売朝刊4面)

安倍首相、宮崎市内の応援演説で
社会保険庁の解体をすると宣言してから、どんどん大きな問題が出ている。
評論家の屋山太郎さんは『社保庁を守ろうと、まるで自爆テロで、安倍政権に
ダメージを与えようとしている』と言った。
決して負けるわけにはいかない。この原因と責任は徹底的に糾明する」

中川秀直幹事長(参照)

 社会保険庁をめぐる問題が次々に表面化したことには「国家組織として残したい人たちが
 (社保庁改革関連法案をつぶすために)自爆テロを仕掛けているのではないか」と指摘。
 「全部うみを出さなければいけないという意味で大いに歓迎する」と述べた。

小池百合子防衛相(参照)

年金問題で混乱すればするほど、日本をガタガタにしようという彼らの目標に近づき、運動は成功を収めるという、まさに自爆テロという話になる」と述べた。

町村信孝前外相(参照)

自民党町村信孝前外相は5日、年金記録不備問題を受けた社会保険庁による記録の照合作業に関して「スムーズにいっていないとの情報がある。安倍晋三首相が来年三月までに完了させると言ったが、それができないよう(労働組合が)第二の自爆テロをやっていると聞いている」と批判した。

渡辺喜美行革担当大臣(参照)
塩崎恭久官房長官(参照)


■評論家・ジャーナリスト
宮崎哲弥(2007年6月10日放送「たかじんのそこまで言って委員会」)
花田紀凱(2007年6月10日放送「たかじんのそこまで言って委員会」)

花田紀凱
「だいたい今、森本先生おっしゃったように、年金問題なんてのは、あれ、年金の記録消失というのがなぜ出てきたかといえば、結局あれなんですよ。あの、社保庁を解体しようとしてるでしょ。それに対して社保庁の職員、自治労の連中が一番現場でああいうことを知ってるわけですよ。もう昔からああいうふうになってることを、彼らは知ってるわけです。その情報を民主党に流したわけじゃない(←注:否定形じゃなく肯定形です、念のため)」

岸井成格(2007年7月15日放送 「サンデープロジェクト」)

自民党幹部連中たちが口を揃えて、「あれはタイミング的に社保庁のクーデター、もしくは自爆テロみたいなもんだ」と

田原総一朗(2007年7月19日日経BP)

だから僕は、社会保険庁がこぞって、いわばクーデターをしかけたのだと思っている。つまり、社会保険庁の年金がめちゃくちゃな状態であるということを、社会保険庁自らが広めたということだ。
(中略)
社会保険庁は、政府・官邸には何も知らせずに「大丈夫、大丈夫」と言いながら、民主党を中心にした野党、そして週刊誌、新聞に、いかに年金の記録がめちゃくちゃになっているかを、どんどんリークしたのだ。

屋山太郎(2007年7月20日読売朝刊4面 同上)

その他にもいるかもしれませんので、情報をお持ちの方はコメント等でお知らせください。


さて、この「社保庁自爆テロ説」ですが、言われっぱなしの民主党が反撃に移りました。ミスター年金こと長妻昭議員が8月17日号の「週刊朝日」において、この陰謀論について反論しています。
きまぐれな日々のkojitaken氏がこの記事の長妻議員のコメントを紹介されているので、反論部分を引用させてもらいます。
きまぐれな日々 自民・公明・民主党政治家の「安倍続投」批判 (週刊朝日より)

長妻昭 「一秒でも早く衆院解散を」
 選挙後半の街頭演説で、消えた年金問題は安倍内閣への「自爆テロ」だという言葉が自民党から盛んに出た。社保庁改革を阻止したい組合や職員が、情報を民主党にリークしているという。ならば、私もテロリストということになる。全くの事実誤認だ。
 5千万件の問題は国会での予備的調査でわかったもので、そこには柳沢(伯夫)大臣もハンコを押してあるから、その論理でいくと、自爆テロの主犯は柳沢大臣になってしまう。

極めて論旨が明快な反論です。5000万件の情報は今年2月の予備的調査で判明したものであって、社保庁からのリークなどではありません。「自爆テロだ!」「リークだ!」などと主張している方々は、一体どんな情報がリークされたと思い込んでいるのでしょうか。私には分かりません。


長妻議員はさらに畳み掛けます。先の臨時国会でこの様な質問主意書を提出したのです。
ながつま昭【活動トピック】

安倍総理大臣の「消えた年金」問題に関する発言等に関する質問主意書

一 安倍総理はじめ、閣僚らが、「消えた年金」問題は、安倍内閣に対する攻撃で、自爆テロである、という趣旨の発言を参議院選挙応援などでしている。少なくとも安倍総理、塩崎官房長官、小池防衛大臣、渡辺行革担当大臣が発言されている。

 そこでお尋ねする。

1 「自爆テロ」とはどういう意味か。誰が、いつ、誰に対する、どのような意図を持ったテロなのか。その被害者は誰か。また、発言の根拠は何なのか。

2 国家のトップリーダーたる総理はじめ、閣僚までもが揃って「自爆テロ」発言をされているが、不適切な発言とは考えないのか。

なんとしても参院選選挙での被害を最小限に食い止めるために、「自爆テロ」などという極めて不謹慎な表現を用いてまで他党や社保庁を貶めた自民党ですが、その甲斐も無く参院選選挙も大惨敗に終わり、今度は自らの発言に責任と説明を求められる番となりました。安倍総理はこの問題についてどう説明責任を果たされるのか、注意深く見守っていきたいと思います。