舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日(上)(下)』の感想リンク
- 作者: 舞城王太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 単行本
- 購入: 10人 クリック: 191回
- この商品を含むブログ (190件) を見る
- 作者: 舞城王太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 単行本
- 購入: 11人 クリック: 58回
- この商品を含むブログ (143件) を見る
舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』を一気読みして徹夜する - 第弐齋藤
小説の登場人物たちが、特に主人公たちが、
愚劣なぐらいによって立つのはつまるところ「正義」なんだよな。(だから、舞城王太郎の小説を読むとほんのちょっとだけ背筋が伸びる。
俺はそれが好きで彼の小説を読んでいるフシもある。阿呆な読み方だけど。)で、この正義と言うヤツは、恐ろしく説明が難しい。(「倫理」ってもいいけど。)
「ほらこれ」と無造作につかみ出そうとすると腐って死ぬようなものだ。
ただの言葉にしてしまうと、ひどく陳腐で腐臭を放ち、有害ですらあるものだ。でも、それは誰の日常にもあるようなものだ。
泣いてる子供を泣き止ませるみたいに。
ディスコ探偵水曜日とSelf-Reference ENGINE - デイライトバウンド
ディスコ探偵水曜日の推理合戦と、Self-Reference ENGINEの演算戦はネタがかぶっている。
一言でいえば、傑作だと思う。
おそらくこの作品は舞城王太郎という作家がメフィスト賞からデビューして、今に至るまでの総集編的な意味合いもあったはず。「世界は密室でできている。」「九十九十九」を踏まえていることはもちろん、おそらくデビュー前の投稿時代の作品「魅惑のミステリア」も踏まえられているんじゃないのだろうか――これは読めないので分からないんだけど
後に思いついたのだが、これってある種の「ひぐらしのなく頃に」(以下、ひぐらし)の変形?というか舞城なりのアンサーなのか、と思いつつある。
情報が無限で、それらひとつひとつのリアリティーもきちんと切りそろえられている世界の中では、どの文脈が正しくてどれが間違いということは現実的には言うことができない。真相が逃げて行く、と作中の名探偵が言う通り、世界は常に更新され追加されながらある。その世界の感触を味わうだけでもこの本を読む価値は充分にあると個人的には思うけど、その世界に対抗するディスコ・ウェンズデイの武器がもう感動的なまでにかっこいい。それが何かは、もちろんここでは言えない。
舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』上下 - drunker’s high
やがて物語は時空の壁すら越えていき、その色合いをミステリからSFへと変じていく。そこで語られる時空論は一応理屈立てされているのだが、結局大切なのは意志の強さだ。作中で常に語られる梢への思い、「子供を救う」という決意――舞城作品では恋人への愛情や仲間との友情、などといったとてつもなくシンプルな感情の大切さが強調されることが多いが、本書でもそのシンプルな感情こそが重要な意味を持ってくる。
天刑病患者 - endless nameless-dance
梢で、初音ミク。
↓
梢初音ミク。
↓
梢ミク。
↓
こずえみく。
↓
「コズミック」。by清涼院流水。
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!舞城版「時をかける少女」だと思ったら館モノが始まって、いつのまにか舞城版「順列都市」になっていた。「不確定世界の探偵物語」だとか「九十九十九」だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。
探偵が12人も出てきて推理合戦を繰り広げたり、宇宙論を語り合ったり、時空を超えて、過去未来を飛び回ったり、更には、世界の果てにまで行ったり。
この物語の中では超現象やおかしなことが何度も描かれている。
けれど、そんなおかしなことを描いた上で作者は結局何が言いたかったのか、となると、答えは、確かに見えてくる。見えてこないはずがない。
初音ミクのイラストレータKEIによるカバーイラストのせいで、読み始めるまで主人公は女の子だと思い込んでいた。「あーきっとコナンみたいな子ども探偵(かわいい女の子)がディスコで起こる事件を解決していく話なんだろうなー」と思っていたら全然違った。
BO GUMBOS - Bo&Gumbo Disco Miracle.mp3 - 砂鉄フィクション
まだ探偵は踊っていない。鳥のとまった電話線が雲になぞられるように、ただ揺さぶられているだけだ。さあさあさあさあ、次へゆこう。ステップの踏みかたは憶えたはず。
舞城王太郎は愛の小説家である。
今までの作品で一貫して語られてきたのは、愛である。
今回がその究極。
「好き嫌い」の感情を含めて、愛の本質について語り尽くしている。
デタラメ、デタラメに次ぐデタラメ、デタラメの濁流、イメージの爆発、とにかく自由、奔放、エロ、グロ、ナンセンス、考えるな、感じるのだ。
しかし、こんな作品書くのは至難の技で、日本刀の上で踊り続けるようなもんではなかろうか。踊り続けろ!ウェンズディイ!
まさしく、舞城王太郎が「何とか」した作品。
もっとも、この世界観、ボクは嫌いなんですけどね。
「ディスコ探偵水曜日 下巻」読了。 - Lunatics a gogo
散りばめられる様々なガジェットがつながり、伏線となり、心地よく回収されるファンクなビートを踊り続けろ!イエー。そんな物語ですた。
ごくごくふっつーの想像力だと、なんかどっかで救いがあって、どっかでいいところ、落ち着くところに収束するけれども、この人の小説だとそんな収まりの良さとか救いなんてのは軽く吹っ飛ばされてしまう
舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』読了 - 西東京日記 IN はてな
部分部分はさすがに素晴らしいものがあって、特に下巻の冒頭にある「ムチ打ち男爵」のエピソードは、村上春樹『海辺のカフカ』のジョニー・ウォーカーによる猫殺しを思い起こさせるもので、悪や暴力の描写として素晴らしいものになっていると思います。
今回は大長編だが、やっていることはいつもと一緒である。ストーリーもキャラクターも世界設定もはっちゃけており、性と暴力、切実な感情や感傷が最後まで渦巻いている。要するにいつもの舞城節炸裂であり、ファンなら従前に楽しめるが、この作家に全くシンパシーを覚えない向きには苦痛かも知れない。しつこいようだが今回は長いしなあ。あと『九十九十九』は読んでおいた方が良いだろう。
疲れたから今回はここまで。気が向いたら足していこう。