竹島問題を国際司法裁判所に持ち込んでも負けるかもしれない

■マレーシアとシンガポールの領有権問題の判決文
このエントリの続きです。


結局判決文を訳して読んでみたものの、長いし、英語だし、主語が分かんなくなったりするし、で今の所殆ど解読出来ていない。
って事でAEP通信の記事を引っ張ってきた。
マレー半島の小島、領有権はシンガポールに 28年間の論争に終止符

 ペドラ・ブランカ島の領有権はそもそもマレーシア側が主張していた。しかし、シンガポール側は130年前から同島のホースバー灯台(Horsburgh Lighthouse)を管理しており、それに対してマレーシアは何の申し立てもしていなかったことから、暗黙のうちに領有権がシンガポールに移転していたと反論していた。

 ICJのAwn Shawkat Al-Khasawneh裁判官は「当法廷は12対4で、1980年までにペドラ・ブランカ島の領有権はシンガポールに移転されていたとみなし、同国に帰属すると判断するに至った」と述べた。

結論から言うと、シンガポールの主張=実効支配の実績が認められた判決と言えるだろう。これは竹島を実効支配されている日本には不利な判決と言えるのではないだろうか。


そんでもって以前にこんな判決があったらしい。
国際司法裁判所は歴史より実行支配を重視

同裁判所の今回の判断には、過去に持ち込まれた他のケース同様、誰の目にも明らかな条約に基づかない限り、「発見」や「歴史」に由来する主権の主張を退けて、「長期に亘る」継続的な実行支配や統治、管理の証拠の積み上げを重視している。


2004年4月14日に行われた史久?国際司法裁判所所長の講演も合わせて読むと、どうもこの流れだと日本と韓国が竹島問題を国際司法裁判所に持ち込んだ場合は、日本が負けそうな気配がプンプンしてくる。
http://www.unu.edu/hq/Japanese/use/event/2004/14april04speech.pdf

It concluded, on the basis of "effectivites" (activities evidencing an actual, continued exercise of State authority over the islands), that sovereignty over the islands Ligitan and Sipadan belonged to Malaysia.
This last case constitutes a landmark in the relationship between Asian countries and the Court as it was the first case between Asian countries introduced before the Court by Special Agreement.
Following this successful precedent, Malaysia and Singapore jointly notified the Court of a Special Agreement for submission of a dispute between them concerning Sovereignty over Pedra Branca/Pulau Batu Puteh, Middle Rocks and South Ledge in July of last year.

この判決は竹島問題に関心がある人間なら必ずフォローしてるだろうから、もっと法律に明るい人の見解を聞きたい。私ではこれが限界。


とりあえず、yahoo!掲示板で竹島問題を論争されていた田中邦貴氏と半月城氏にメールを送っておいた。


【追記】
yahoo!掲示板にて法律に明るそうな方がいらっしゃいましたので、書き込みを転載します。日本よりの意見ですので、それを念頭において読まれてください。

http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1835396&sid=1835396&tid=cddeg&mid=1

16631 投稿者:henchin_pokoider01 投稿日時:2008/ 5/24 16:43
国際司法裁判所の新しい判決

シンガポールとマレーシアの間で争われていたPedra Branca/Pulau Batu Puteh, Middle Rocks and South Ledgeについて国際司法裁判所の判決がでました。
http://www.icj-cij.org/docket/files/130/14490.pdf
http://www.icj-cij.org/docket/files/130/14492.pdf

要約すると以下のような感じです。(間違いがあればご指摘を)

<主張>
マレーシアはジョホール国以前から続く原始的権原と権原の継続。シンガポールは18世紀中盤において無主地だと主張しているが、マレーシアは英国が灯台建設のために合法的取得をしたと主張。

<判決>
シンガポール海峡にある全ての島は、原則としてジョホール王国の領域としていた。しかし、ジョホールによるいかなる権力行使もなされておらず、平和的・継続的な実効支配による実効支配を満たすとは判断できない。このため、裁判所は原始的権原をジョホール保有していたと認める。
次ぎに、1824年から1840年代にこの権原が有効であったかを検証する。1824年3月にイギリスとオランダは植民地の境界画定条約を締結し、ジョホール王国はイギリスの管轄範囲となりラーマン王国、フセイン王国はオランダの支配下となった。フセインは、1824年4月にシンガポールから10マイルにある海峡や島をイギリスの東インド会社に割譲した。最終的に1825年7月の手紙の中で、ラーマンは既にイギリスの支配下にあった領土を彼の兄に寄贈した。それ故、古ジョホール王国の領域が再確認できた。裁判所は、これらのことが原始的権原に変化を及ぼさなかったことを認める。
次ぎに、裁判所は1840年以降にマレーシアの主権が維持されたのか検証する。維持のためには、当事者による管理に関する事実の検証が必要とされる。裁判所は1852年から1952に渡る活動と共に、灯台設置場所選定と建設に関する出来事を調査した。裁判所は1953年6月にシンガポールの植民地長官が、ジョホールの英国外交顧問に書いた手紙に注意を払った。その手紙において、植民地の領海の境界画定の文脈でブランカ/プテ島に関する情報を要求していた。1953年9月の返信においてジョホールの臨時国務長官は「ジョホール政府はその島の所有権に関する請求権をもたない」とした。裁判所はこの返信により1953年においてジョホールが島の主権を有しないことを認める。

最終的に、裁判所は1953年以降の両国の同島に関する活動を検証する。シンガポールには同島の領海内にある難破船の調査を行ったこと及び抗議もなくマレーシアの職員による同島周辺海域での調査をシンガポールが承認及び拒否したという明確な活動を実効支配の権原?として認める。他にもいくつかの具体的な出版物や地図と共に、同島にはためくシンガポール国旗へのマレーシアの無反応、1977年のシンガポールの軍事通信施設の導入、シンガポールによる再開発について、裁判所はシンガポールの主張を支持するものとして考慮する。


16632 投稿者:henchin_pokoider01 投稿日時:2008/ 5/24 16:54
16631 Pedra Branca等のICJ判決からみる竹島

注目すべきは、以下の点でしょうか。まぁ改めて日本の権原の正当性と共に韓国の主張する権原の不法性が確認できたというところしょう。

・軍事施設の設置も実効支配の証拠として認めている。
 →1905年日本軍による竹島の仮設望楼の建設も実効支配として認められる。

・交換文書によりマレーシア(ジョホール)の原始的権原の委棄を認めるが、
 シンガポールの権原成立とはせず、それ以降の実効支配に基づくものとした。
 →『日本海竹島他一島地籍編纂方伺』の外一島が竹島だったと仮定しても、
  韓国の権原を証明するには、実効支配の証拠が必要(韓国の権原が成立していない。)

・外交顧問や長官間の書簡を有効としている。
 →ラスク書簡ラスク書簡を追認し再通告した米大使館の書簡は有効。


16633 投稿者:henchin_pokoider01 投稿日時:2008/ 5/24 18:04
16632 Pedra Branca等のICJ判決からみる竹島2

更に竹島に参考となる点を見つけました。

シンガポールはこの通信設備設置が、公開の元に実施されたと主張。(Singapore says that the installation was carried out openly・・・・)

・マレーシアは、通信設備設置が灯台の本来の目的ではなく軍事目的であること、秘密裏に行われたと抗弁。("has raised serious concerns about Singapore's use of Horsburgh Lighthouse for non-light (and especially military) purposes"・・・, "the installation was undertaken secretly and that it became aware of it only on receipt of Singapore’s Memorial.・・・”

判決では、設置に関するマレーシアの知識の有無はどうでもいい感じ。重要なのはシンガポールの主権者としての活動としている。通信施設設置は、シンガポールが活動に関して何らかの制限を受けていたとする認識とは相反するとした(=何の制限も受けてない)。
The Court is not able to assess the strength of the assertions made on the two sides about Malaysia's knowledge of the installation. What is significant for the Court is that Singapore’s action is an act 醇A titre de souverain. The conduct is inconsistent with Singapore recognizing any limit on its freedom of action.

竹島にあてはめてみれば、何ら制約をうけずに自由に竹島に望楼を建設し、通信施設を設置し、監視活動をしていた日本海軍の活動は、「act 醇A titre de souverain」として認められるということですね。

個人的には過去の日本の実効支配を持ち出しているけれども、現在の韓国の実効支配については考察を避けているように見えます。ですが、一方的に韓国の主張が認められるという事態にはならなそうです。


【追記】
何故上の人が韓国の実効支配に触れなかったのか。そもそも実効支配はどこからも抗議がない場合に認められるそうだ。つまり現在の韓国の実効支配は厳密には実効支配ではない。日本の場合はどうか。1905年に編入した際にはどこからも抗議が無かったように思える。だが、その場合韓国が抗議出来るような政治状況だったのかが問題になるのではないだろうか。抗議したくとも出来ない状況であった、との韓国の主張が認められれば、日本の実効支配も認められなくなる可能性があるのではないだろうか。その場合、歴史よりも実効支配(法的ではなく管理的な意味合い)を重んじるとすると、結局の所、引き分けで共同管理という判決になるかもしれない。
以上、法律のド素人の戯言でした。